あいキッズ事業者再選定の改善を求める陳情に賛成する討論

討論日:2020年10月13日

ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第83号あいキッズ事業者再選定の改善を求める陳情の委員会決定「不採択」に反対し、陳情に賛成する立場で討論を行います。

本陳情は、あいキッズ事業者の再選考に至るまでの進め方や引継ぎのあり方について改善を求めるものです。それは、我が子を預けるあいキッズにおいて、突然、事業者が変更になったことを知らされた、保護者のショックや不安な気持ちの現れから、提出されています。

陳情に賛成する第一の理由は、選考過程の仕組みや選考状況について説明や周知が不十分で、改善が必要であるという点です。

現在のあいキッズの選考過程は、1年の委託契約を問題がなければ5年まで更新することを原則に、特例として、運営評価がAまたはBの事業者は、さらに1年間契約を更新でき、最長で9年間まで更新できるようにしてきました。

しかし、その仕組みについて、区も認めるように、事業者にはいろいろな会議の場で説明と確認はしてきたものの、保護者に対してはその説明の機会も紙ベースでも少なく、利用案内の中にも記載されていませんでした。

また、今年度事業者が変更になった高島第五小あいキッズでは、7月の事業者選定の説明は、通知配布の翌日だったため、参加者は少ない状況でした。それどころか「事業者選定の説明会だと知らなかった」といった声が出たように、従来のあいキッズ保護者会の中で説明するに留まっているため、その説明会をいつもの保護者会だと認識していた人は少なくありません。それは、選考結果の説明会も同様で、この学校では、事業者が変わる事と説明会開催の案内配布の2日後が説明会でした。結果として、仕事や家庭の調整ができずに、参加できなかったという親は少なくありませんでした。

こうした対応は、事業者変更そのものがどれほど大きな影響を生むのか、そのことで、こどもを預けている保護者がどんな不安を持つのかを軽視している姿勢だと言わざるを得ません。

陳情審議の過程で、説明会の案内時期を1カ月前の配布にすることや事業者選定の仕組みを説明会に行かれない場合でも知ることができるように案内プリントに掲載する、利用案内にも記載するといった改善が行われましたが、それは、利用者への説明責任として、当初から行われるべきものです。

第二の理由は、より多くの保護者、利用者の声を把握し、反映する努力をもっと行うべきだということです。

満足度アンケートは、ウェブ上のみの実施で回答率は10%と低い状況です。陳情者が求める紙ベースで実施することに対し、区は「集計処理やペーパーレス方針、複数回答が防げない」ことを理由に実施できないとしています。しかし、2万3千余りの対象の10%の2,300枚を51校で割り返しても、1校あたり50枚足らずです。より多くの利用者の声を寄せてもらうためには、手間や紙を惜しまず、複数回答を防げないなどと疑うよりも、「満足度アンケート」の結果が事業者の更新に影響することなど、アンケートの役割を示した上で、アンケートを実施するべきです。

また、プロポーザルの選定委員の2人の保護者委員が、利用者を代表しています。しかし、中には、きらきらタイム利用者がいない中で選定しているケースもあります。さんさんタイムもきらきらタイムも、様々な利用形態の家庭にとって、あいキッズ事業がどうあるべきか、事業者選定に反映させるためには、保護者委員の増員も行うべきです。

第三の理由は、「学童保育の継続性」を重視した仕組みにするべきだということです。

現在の、複雑な選定過程は、委託事業という仕組みの中で「保育の継続性」をなんとかつくっていかれないかと工夫してきた結果です。

区は、8月の文教児童委員会で、「仕組みが複雑で分かりずらいことで理解してもらえない」と、2021年度以降は、原則例外を設けずに、一律更新限度を5年間とする方針を示しました。指定管理者制度を準用して「5年間」としていますが、保育園の指定管理は10年です。保育の継続性を考えれば、最長9年同じ事業者からの保育を受けられる可能性を閉ざし、一律5年にすることは、大きな後退だと言わざるを得ません。

また、プロポーザルにおいて、区は、保護者選考委員の加点は従来どおりの2人合計で20点あれば充分だと言いますが、基礎採点全員の満点810点からすれば、ほとんど影響しないことは明らかです。事務局採点が150点と大きく、その採点では「提案金額の妥当性」が最も高い50点を配点するものになっています。区内事業者への加点も10点あると言いますが、あいキッズを10カ所以上受託していると20点、特別区で受託実績があると20点が配点されています。それは、区内の小規模な社会福祉法人よりも、行政区を超えた大規模に展開している事業者の方が、選定されやすい仕組みとなっています。保育の継続性よりも、財政的な事業性が優先される仕組みは問題です。

第四の理由は、事業者変更に伴う引き継ぎ期間は足りていないということです。

これまで、あいキッズの引継ぎにおいては「20日程度」と仕様書で示されていました。区は、本陳情を受けて、「1カ月程度」と変更したものの、そもそも、引継ぎ期間が十分とは言えません。

保育園の民営化においては、保育の引継ぎは1年前から始まり、全てのクラスに配置して行われる合同保育だけでも、4カ月間の引継ぎ期間を設けています。しかし、あいキッズは、引継ぎの方法も人数も十分とは言えません。事業者が変われば、保育の方針も、こどもへの接し方も、大きく変更します。どんなに事業者が変わっても、そのサービスや質を落とさないと言うなら「保育」に必要な引き継ぎ期間を設けるべきです。

とりわけ、今年度から事業者が変更になった高島第五小あいキッズは、コロナ禍で学校休校の中、子どもたちが利用できずにいる期間が引き継ぎ期間になりました。保育の引継ぎという視点で考えれば、引き継ぎ期間を延長するなどの対応こそ必要だったと考えます。

今年度、9ヵ所のあいキッズ事業者がプロポーザルになります。コロナ禍で、「密」になることを理由に、未だに、利用対象から外れている子どもがいます。子どもたちの不安を考えれば、コロナが終息するまで、事業者変更は行わないなどの緊急対応こそ行うべきです。

最後に、あいキッズが始まって一定の期間が経過しています。

あいキッズは、こどもの遊び場を見守るだけのものではなく、就労などで保育に欠ける児童を家庭に替わって「保育」する役割を持っています。しかし、時間で区切った一体運営のため、親が就労していても、さんさん登録をしている子どもの学童保育が、今でも保障されていないことは大問題です。

陳情審議の過程で、多くの委員から、「仕組上の課題がある」「事業に対する不安の声を聞いている」などの意見が上がったように、全児童対策と学童保育の一体運営が子どもたちにどういう影響を及ぼしているのか、必要な対応が保障されているのか、その運営の仕組み自体を見直していくことこそ必要な時期が来ています。

あいキッズ事業が、こどもにとって、家庭にとって後退することなく、必要な保育の保障が行われるよう求めて、私の討論を終わります。

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