討論日:2021年3月2日
ただ今より、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第12号 東京都板橋区職員定数条例の一部を改正する条例に反対する立場から討論を行います。
本議案は、職員定数を3,476人とし、事務部局ごとの定数について、区長部局12名増の3,115人、教育委員会5名減の195人、学校職員7名減の126人、その他部局を増減なしの40人とするものです。
反対する第一の理由は、コロナ禍への対応、コロナ後の行政のあり方を見据えたものになっていないからです。
『いたばしNo.1実現プラン2025』に基づく『人材育成・活用計画』では、2020年に経験したコロナ禍での対応を踏まえ、今後の人材育成や活用に活かすとしています。しかしながら、今回示された職員定数は、2020年度と変わらないどころか、コロナ前から5年連続同数という異常なものです。
コロナ禍の最前線で対応に当たってきた保健所は、他部署の職員による兼務などで乗り越えてきました。新年度は予防対策課の保健師や事務職員の増員が図られているものの、保健師は、各健康福祉センターから引き上げての増員です。区は、保健師について、定数は変えないものの、実人数を増やす予定だったとのことですが、保健師の新規採用数は区の希望数を確保できず、結果として増やすことができていません。予防対策課職員の有給休暇取得率は区の目標の85%どころか60%にも届かず、コロナ禍では5割を切っています。時間外勤務も多く多忙な職場であるところに加えてのコロナへの対応でますます現場は疲弊しています。保健所は予防対策課だけでなく地域の各健康福祉センターにおいても、区民の命と健康を守る保健衛生の砦です。これまで積極的に増員してこなかったことがそもそもの要因であり、今いる人材を回すだけの増員では、全く不十分と言わざるを得ません。中・長期的な体制強化を含め、抜本的な見直しが必要と考えます。
また、コロナ禍で生活困窮者が増加し、生活保護制度の利用も増加しています。福祉事務所では業務効率化も合わせて保護係及び援護係で3名ずつの増員となっていますが、経験年数が短く、年齢も若い職員が多数を占めており、専門性の向上や継承といった点でも課題があります。また、ケースワーカー配置基準を87:1から80:1に変えることや査察指導員である係長を増やすことについて、これまでも繰り返し要望してきましたが、実行されていません。福祉事務所は区民の暮らしと権利を守る役割を担っています。ひとりひとりに寄り添う支援が十分に行えるよう、福祉事務所の職員を増員すべきです。
また、学校用務で5名の減、保育園の用務・給食調理員で8名の減となっています。区は、これまでの方針を継続し、更なる委託化を進めようとしています。しかし、委託化によって生み出されている官制ワーキングプアの是正については、何ら責任を持とうとせず、民間事業者へ丸投げの姿勢です。また、今後障害者雇用の拡大を図る上で、様々な職種・職場があることは、非常に重要です。そして何より、区が直営を持っているからこそ、民間事業者に対し基準を示し、指導監督することができるのです。コロナ禍で学ぶべきはいかにマンパワーが必要かということであり、区民に直接かかわる窓口業務や学校や保育園を支える業務での更なる委託化はやめるべきです。
反対する第二の理由は、新たな事業を進める上で、充分な体制が図られていないからです。
2022年度の開設を目指している児童相談所については、新年度は新たに担当部長を配置し、児童相談所開設準備課には連携調整係を新設し、全体で16名の増員を図るとしています。また、(仮称)子ども家庭総合支援センターの開設に向けて、現在の子ども家庭支援センターの組織も再編する内容が示されていますが、新たな増員はありません。虐待の通報や相談も増加しており、児相の開設に向けた事務的な人員体制の補強だけでなく、相談や直接支援の体制を強化することが必要です。
区立保育園では医療的ケア児の受け入れを行うために新たに看護師が配置されます。ところが正規職員ではなく会計年度任用職員のため、定数は増えていません。正規職員の看護師が配置されている区立園で受け入れるためとしていますが、命を預かるという認識があるのでしょうか。医療的ケア児の受け入れのためには、正規看護師に加え正規保育士の増員を図るべきです。
教育委員会では、教育支援センターで3名の増員となっていますが、ギガスクール推進担当係の新設と教育ICT推進係への2名の増員です。一方、教育相談所やフレンドセンターなどを含む教育相談係への増配置はありません。区は、不登校対策を重点的に行っていくとしていますが、そのために必要な人員を増やすべきです。
また、区立幼稚園の再編として、新河岸幼稚園の廃園による3名の減、高島幼稚園での3歳児の受け入れ拡大のため1名の増となっています。2名を減らすのではなく、新河岸幼稚園から高島幼稚園に転園する子どもへの支援や、障害児保育や入園に関する相談に対応するための新たな体制強化を図るべきです。
反対する第三の理由は、区民の生活に密着した体制より、大規模再開発によるまちづくりを推進する姿勢が現れているからです。
都市整備部では、東武東上線の連続立体化や大山駅、JR板橋駅周辺、上板橋駅周辺のまちづくり事業の推進に伴い、高島平グランドデザイン担当課を含め、新たにまちづくり推進室を設置し、担当部長を配置するとしています。いずれの計画も不動産デベロッパー主導によるタワーマンション頼みの再開発事業です。多くの住民が住み続けることができず、街を分断する大規模再開発を一層推進するための体制強化は容認できません。
一方で、土木事務所と公園事務所を統合し、工事課を廃止して、二カ所のサービスセンターが創設されます。土木事務所の作業班を民間委託ではなく直営に戻したことは評価できるものの、正規職員ではなく会計年度任用職員の配置となっています。また、サービスセンターの定数はそれぞれ27名となっていますが、サービスセンターに統合されることで、3名の削減となります。近年の台風や集中豪雨など、災害が大規模化していることや、区道や公園など区の管理施設の老朽化の状況を踏まえれば、減員するのではなく、増員こそ図るべきです。
住民の声が届かない大規模再開発推進のための体制強化ではなく、住民や地域に密着した業務こそ優先すべきです。
反対する第四の理由は、職員の働き方を抜本的に改めるための定数となっていないからです。
区は、特定事業主行動計画において時間外勤務の削減や男性職員の育児休暇の取得促進などの目標を掲げています。業務改善を図り、目標達成を目指すとしていますが、サービス残業を含め、実態を把握しておらず、必要な人員数も試算していない中で、達成できるはずがありません。区職員が働き続けることができる環境づくりは、喫緊の課題です。過労死や過労自殺を引き起こしかねない現状は直ちに改善すべきです。
以上述べてまいりましたが、コロナ禍で浮き彫りとなった様々な課題を解決するためにも、区民の福祉の向上を図るためにも、職員を増やす必要があることから、本議案に反対し討論を終わります。