2020年度 最終補正予算に対する反対討論

討論日:2021年3月2日

 只今より日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第6号 令和2年度東京都板橋区一般会計補正予算(第7号)、議案第7号 同 国民健康保険事業特別会計補正予算(第4号)、議案第8号 同 介護保険事業特別会計補正予算(第2号)、議案第9号 同 後期高齢者医療事業特別会計補正予算(第1号)、および議案第10号 同 東武東上線連続立体化事業特別会計補正予算(第1号)に反対する立場から、討論を行います。

 7号補正の総額は49億25百万円で、補正を合わせた予算総額は2984億53百万円となり、過去最高を更新しています。

反対する第一の理由は、コロナ対策が不十分だからです。

 コロナの感染状況を把握することは、感染拡大を抑えるための基本です。PCR検査の目的は「無症状の感染者の早期発見」です。区の認識を改め、社会的検査に踏み出すべきです。特に他人との濃厚接触を避けることが出来ない介護や保育施設の職員が、感染している可能性を抱えながら勤務することは健全ではありません。にもかかわらず区はこの間、高齢者施設、事業所、医療機関等で従事する人に対する「定期的なPCR検査」を否定し続けてきていますが、こうした姿勢は改めるべきです。

 医療機関や介護関係の事業所は、コロナ禍の大きな影響を受けています。

 新型コロナウイルスへの感染を恐れ、多くの方が医療機関への受診を控えています。生活保護の医療扶助費8億円の減額は受診抑制のひとつの実態を示しており、多くの医療機関が大幅な減収に苦しんでいます。そのしわ寄せは医療機関の職員にもおよび、2020年度の夏季及び冬季一時金が大幅に減額あるいは全面的に支給されないといったことも話題になりました。介護事業所等の倒産や閉鎖は過去最大の水準となっています。

 医療機関や介護事業所、通所施設などの減収はコロナ災害によるものであり、地元自治体として「経営状況を掴んでいない」という姿勢は、責任を果たしているとは言えません。コロナ禍のもと、必要な医療や介護を保証し続けるためにも、施設等の減収を補填するべきです。

 区の職員の中で非常に厳しい状況に置かれている部署の一つが保健所です。本来の定数では足りずに他部署から応援を受けているにも関わらず、超過勤務時間は昨年4~12月の9ヶ月間だけで過労死水準の360時間を超える職員が8名、うち4名は500時間を超えており、過労死寸前の状況です。応援はOBの保健師をはじめ、東京都からの派遣、民間医療機関からの協力、看護師は派遣等で行われましたが、中心は区職員の兼務によるものとなっています。

 新型の感染症は今回のコロナで終わるものではなく、新規の感染症がいつ拡大しても対応できる体制を整えておく必要があります。そのためにも兼務ではなく、正規の職員こそ配置するべきです。

 区全体で見れば、職員に対して支払われた時間外手当の合計は80億25百万円で、当初予算では前年比で90%に削減することを目標としましたが、補正で増額され97%にとどまっており、全体としてマンパワー不足です。災害等の緊急時に区職員が疲弊していては、区民のいのちを守ることは困難です。

 コロナ禍は区民生活に大きな影響を与えています。派遣労働等の不安定雇用で働く者は、コロナ禍によって休業や解雇が押し付けられ、減収や失業に追いやられています。タクシーの運転手からは、月の手取りが7万円に減り、生活保護のほうがマシだと聞きました。町工場の経営者は3月末で工場を閉め、夫婦でアルバイトをして凌ぐと言います。特別定額給付金や住居確保給付金など一定の救済はありましたが暮らしを支えるには全く不十分で、生活困窮が広がっています。

 前年度17件だった住居確保給付金の申請は、今年度1月末までに929件であり、前年比で55倍となりました。社会福祉協議会の緊急小口資金や総合支援資金は、前年度実績ゼロでしたが、利用申請が相次ぎ、合計で1万件を超えました。こうした資金の利用は生活保護を申請する一歩手前の状況であり、区民の生活が困窮していることの指標です。

 区内の中小事業も大きな打撃を受けていますが、区はその状況について把握しようとはしていません。状況を把握せずに必要な支援を打ち出すことは出来ません。

 区は今年度、小規模事業者緊急家賃助成事業を総予算10億30百万円(うち区費6億32百万円)で行いました。その結果、4億14百万円を交付しましたが、使い残した4億99百万円を減額補正しました。申請件数は6000件を見込みましたが、実際には3364件にとどまっています。プレミアムバルチケットは事業が中止となり、キャッシュレス決済ポイント還元事業も94百万円を減額補正しています。減額補正された予算は、基金へと積み上げられていますが、基金に積み上げるのではなく、条件を緩和する等対象を広げるべきです。また、文化芸術団体やアーティストへの支援は全く足りていません。

 コロナ対策としてはあわせて717億55百万円が計上されましたが、大半が国や都の特定財源であり、区単独の歳出としては50億円程度でした。区としてさらなるコロナ対策を打つことが出来たはずです。

反対する第二の理由は、区民のいのちと健康を守る努力が不十分だからです。

 保険料の減免申請は、国民健康保険で2113件、介護保険は569件、後期高齢者医療保険は171件となっており、命と健康を支える保険料さえも支払うことが困難な様子が伺えます。また、国民健康保険では60件の差し押さえが行われました。差し押さえを減らす努力がされましたが、コロナ禍の生活困窮者に差し押さえをすること自体大きな問題です。

 介護事業所や通所施設、高齢者を対象とした講座や施設等がコロナ禍で利用できなくなったために、高齢者や障害者の行き場がなくなり、その自立が妨げられました。本来元気な高齢者や障害者が自宅に引きこもり、認知症が進行したり、筋力が低下したりと、要介護の状態に進行することが考えられます。介護事業所の倒産や閉鎖、休業等で介護を受けられない状態になっていても、その対応が事業者まかせとなっていることは問題です。区として必要な介護を保証し、高齢者の健康を支えることは、自治体の役割です。

反対する第三の理由は、子ども・子育て世帯への支援が不十分だからです。

 コロナ禍において、感染への不安や休校、自粛や行事の中止などで子どもたちは傷ついてきました。だからこそ、子どもたちの発達を保障する事業は立ち止ることなく、子どもに寄り添った取り組みが求められていました。

 しかし、区は小学生の居場所としてきたあいキッズのさんさんタイムの利用を中止し、未だに再開のめどが立っていません。学校施設の利用できる場所を増やし、再開する努力を進めるべきでした。あいキッズからしめだされた上に、児童館も小学生の利用が中止されたままです。区が小学生の居場所について「友だちの家や公園がある」などしていることは、子どもや家庭に自己責任を押し付け、行政としての役割を放棄していると言わざるをえません。

 また、小中学校でも修学旅行などの宿泊行事や連合行事、さまざまな文化行事が中止になり、教育費が大きく減額となりました。国は7月に「修学旅行などは可能な限り中止せず、延期や実施方法の変更を検討」するよう各教育委員会に求めていました。区教委は感染防止のための「中止する判断」は示したものの、実施するための対策や代替の行事などについては積極的ではなく、各学校の判断に任せる対応をとりました。こうした姿勢は、教育委員会として学校運営を支援する役割を果たしているとは言えません。

 保育園待機児対策の新規保育所整備は、6ヶ所の計画に対し4ヶ所の整備に留まりました。コロナ禍で保育園の経営も困難を強いられています。だからこそ、新たな保育所を整備するには区として土地を確保するなどの対策を取るべきでした。

 子どもの学びや発達を保障する分野で、専門的な職員配置が欠員のまま運営されてきたことも問題です。子ども家庭支援センターに2名配置するはずの「虐待コーディネーター」は、経験値が必要不可欠ですが、会計年度任用職員のため、経験値のある人は正規職員として他自治体の募集に流れ、何度募集しても2名欠員のままです。教育支援センターの「言語聴覚士」の雇用単価は23区で最も低く、1名欠員です。その他、学校生活支援員や学力向上専門員、スクールソーシャルワーカーも必要な人数配置に至っていません。それは、結果的に子どもたちへの専門的な対応が保障されない状況を生んでいます。年度途中でも処遇や賃金などを改善し、欠員を解消する努力が行われるべきでした。

反対する第四の理由は、区の財政運営が区民本位ではないからです。

 区は2020年度、特別区交付金の41億円の減少やコロナ禍による区民税の減少等による財源不足の対策として緊急財政対策を実施し、歳出を97億19百万円削減しました。一方で、区の財政調整基金には年間で125億円が積み立てられ、基金総額では157億円の積み増しとなり、すべての基金の合計は748億40百万円となっています。

 自治体の仕事で優先されるべきは、住民の福祉の向上であり、基金の積み上げではありません。困窮する区民や区内事業者等を支援することをせずに、基金への積み上げをすることは許されません。

 区民の立場に寄り添った区政運営を求め、補正予算に反対の意見を表明し、討論を終わります。

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