討論日:2021年3月2日
ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第19号 東京都板橋区介護保険条例の一部を改正する条例に反対し討論を行います。
本議案は、第8期板橋区介護保険事業計画に基づき、保険料の基準額を6,040円とし、第7期と比べて100円引き上げるものです。合わせて、収入が変わらないのに所得段階が上がってしまうことなどを防ぐための見直しを行うもので、所得段階などの見直しについて反対するものではありません。
本議案に反対する第一の理由は、保険料をこれ以上引き上げるべきではないということです。
今回の改定で、所得段階別のすべての階層で保険料が引き上げられます。それは、生活保護を受給している世帯や、世帯全員が住民税非課税の世帯にも及んでいます。
介護保険制度が始まってから3年ごとに引き上げられ、今では高すぎる保険料にもかかわらず、保険料は年金天引きで問答無用に払わされています。第7期の年金天引きされない普通徴収では、毎年5千人を超える人が保険料を払うことができていません。まして、コロナ禍において、経済状況が厳しい今、これ以上の負担を区民に押し付けるべきではありません。
だからこそ23区でも4区が保険料を引き下げ、7区が据え置く努力が行われています。区は、保険料引き上げを抑えるため、約29億円の介護保険準備基金の内25億円を投入するとしています。しかし、第8期の3年間で新たに15億から25億円の基金が積み上がることが見込まれています。第7期でも毎年、取り崩し額よりも多くの「基金への積み立て」が行われています。第8期で準備基金全額を保険料抑制に活用しても、第9期への影響はほとんどないと考えます。委員修正でも示したように、準備基金を全額投入し、一時的に区の一般会計から繰り入れれば、保険料を据え置くことは可能です。
第二の理由は、第8期事業計画の計画量を大きく見積もった結果が、保険料の増につながっていることです。
区は、第8期事業計画でも、地域密着サービスを区内18圏域で充実させていくとしていますが第7期でも「夜間対応型訪問介護」は18圏域中徳丸地域の1カ所しか整備できず、利用人数も見込みを下回り実績は毎年150人に達していません。このように見積もった整備計画が実施できていないにもかかわらず、その計画量で保険料が定められるのです。計画値に達していない事業について、見通しも具体的に示されていないにも関わらず、保険料の積算根拠に入れられている事自体を見直すべきです。
第三の理由は、介護保険法改定に伴う利用料値上げに対して、区独自の軽減策を講じなかったことです。
厚生労働省は経営難を支えるため、デイサービスやショートステイなどの介護報酬単価を0.7%引き上げました。しかし、コロナ危機のもとで、介護事業所の倒産が過去最高の状況で、全産業平均より8万円低い介護職の給与を引き上げ、人員を確保するためには、全く足りていません。
しかも、わずかに引き上げた報酬単価分の財源は、従来の国25%、地方自治体25%、保険料50%に載せるだけで、国の負担割合はこれまでと変わりません。その結果、保険料や利用料の引き上げにつながっています。サービスの内容は変わらないのに、利用料だけが高くなることに、利用者や家族から憤りの声が上がっています。介護報酬引き上げによる負担増は、国の予算で対応すべきです。
また、新年度から世帯全員が住民税非課税のうち年金収入120万円を超える世帯を対象に介護施設利用者の食費負担が月額2倍以上に引き上げられます。それは、デイサービスやショートステイを利用する際の一食当たりの食費負担にも影響します。
すでに、利用料が高すぎて「利用抑制」が起きています。介護保険制度が始まって20年、「保険あって介護なし」の状態は、深刻さが増しています。必要な介護を保障するためには、区として独自の利用料軽減策を行うべきです。
コロナ禍で、日本社会の脆弱さが露呈する中だからこそ、国や行政の役割が求められています。介護保険の構造上の課題を利用者や保険料に課すのではなく、高齢者やその家族が安心して介護を利用できるものに、そして、介護で働く人が安心して働き続けられる環境にすることは国や行政の責任です。いま、区民に対して、これ以上の負担増を行うべきではないことを申し上げて、討論を終わります。