2021年度 当初予算等に関する討論

討論日:2021年3月23日

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第1号「令和3年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号同国民健康保険事業特別会計予算、議案第3号同介護保険事業特別会計予算、議案第4号同後期高齢者医療事業特別会計予算、議案第5号同東武東上線連続立体化事業特別会計予算に反対し、議案第24号「令和3年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論を行います。

 新型コロナウィルスの感染症発生から1年が経過し、二度の緊急事態宣言が解除された今も感染が収束する見通しはありません。それどころか微増傾向で、第4波や変異株の影響への懸念は増すばかりです。

 コロナウィルスは、新たな感染症が発生すると、たちまち暮らしも経済も立ちゆかなくなる社会構造になっていることを浮き彫りにしました。

 政府のPCR検査を増やすことを怠り、国民に自粛を求めながら十分な補償をしないことは、科学を無視し、国民への自己責任の押し付けです。コロナ危機は、新自由主義の名の下による医療費削減、保健所を減らし、雇用の質の劣化などの延長線上に起きています。

 新年度予算は、一般会計が、前年度比で0.4%の減、2,209億4,000万円ですが、より積極的な財政支出を行い、住民の暮らしに寄り添った区政へ向かう時です。

 反対する第一の理由は、感染拡大を抑える姿勢やコロナ災害への危機感が足りないことです。

 感染者数は板橋区でも下げ止まるどころか増加傾向です。にもかかわらず、新たな対策なしの緊急事態宣言解除が、ますます住民の不安を広げています。不安が長期化している今、遅れているワクチン頼みでは感染拡大を防ぐ事はできません。政府の新型コロナ対策分科会の尾身会長も、感染リスクの高い集団・場所を特定し、軽症者や無症状者に焦点を当てた検査を強く求めています。板橋区の検査可能数すら明らかにせず、国や都の指示待ち、様子見は、行政としての危機感が足りないと言わざるを得ません。他の自治体では、「国の計画を待っていられない」と、独自の対策を行っています。PCRセンターの社会的検査のための活用や医療機関などへの減収補てんにこそ踏み切るべきです。

 コロナ関連倒産・廃業はますます深刻です。しかし、コロナ感染症対策の経済的支援は、飲食店などの時短営業に対する都の協力金に上乗せしたもの以外に、利子補給の保証料補助と相談支援だけです。影響が見え始めた製造業や収入が途絶えた文化に関わる業種へ支援もありません。区民生活への支援は、福祉資金貸付者への図書カード配布と、住居確保給付金受給者の家賃更新料補助のみで、経済的支援が十分とは到底言えません。 

 閉塞感の広がる区民や事業者が、事業の継続や生活再建へ向かえる支援をもっと行うべきです。

 第二の理由は、「自己責任」の姿勢で行政の役割を放棄していることです。

 コロナ発生後、学童保育の機能を持つあいキッズ事業のさんさんタイムは利用ができなくなり、未だに再開の見通しがありません。コロナ禍で、さんさんタイム登録の就労家庭が、有料区分のきらきらタイムへの登録を余儀なくされたことは、さんさんタイムが「学童保育」としての機能を保障していないことを示しています。

 また、あいキッズを利用できないことについて、区が「自宅や友だちの家がある」などと答えたことは、家庭や子どもに自己責任を押し付けるものです。子どもの居場所確保は行政の責任で行うべきです。

 医療保険において、差押え強化が強調されていることは問題です。

 国民健康保険では、新年度から「収納率の目標設定」が導入されることが、徴収強化につながりかねません。保険料は、コロナで減免が実施されたものの、さらなる負担増です。資格証発行や差押えの実施は、コロナ禍に医療を受ける権利を侵すもので行うべきではありません。

 後期高齢者医療制度は、国の均等割額に対する特例措置が終わり、今後、窓口負担2倍化など、高齢者の命や暮らしを守る姿勢とは言えません。ただちに差押えを中止すべきです。

 介護保険は、国の法改定を受けての負担増と合わせて、今まで以上に「利用抑制」が起こることが想定されます。

 医療も介護も、区としての独自軽減策実施を検討もしないことは、受診や介護の抑制といった実態に背を向けるものです。

 第三の理由は、「No.1実現プラン2025」が、「ポストコロナ時代における『新たな日常』と言いながら、コロナ収束後に求められる行政の役割に応えていないからです。

 まず、新型コロナで改めて浮き彫りになった「貧困」の視点が足りません。

 コロナの影響で解雇や雇止め、収入減で家賃を払えなくなった人たちを支えた住居確保給付金への相談1,929件のうち、生活保護受給につながったのは、わずか7人です。

 生活保護受給対象にもかかわらず、保護だけは受けたくないという理由の多くが、福祉事務所が行う「扶養照会」です。本来「義務ではない」扶養照会を「必要性を説明する」という区の姿勢では、申請をあきらめることにつながりかねません。セーフティネットの機能として、生活保護は権利であることを基本に据え、むしろ、生活保護制度を広く周知し、いつでも来てくださいという福祉事務所となるべきです。警察官OBが相談に来た人を大きな声で脅すような対応は問題です。この間の運用を検証し、警察官OBの配置は見直すべきです。

 女性の「貧困」も深刻です。コロナ禍でDV相談の件数も増加し、相談体制の強化は急務です。子どもや女性の困難をいち早く発見できるのが保育園や幼稚園・学校です。

 しかし、区の「保育園民営化」だけでなく、将来的に需要が下がれば「民間に任せて公立園廃止も視野に入れている」などという姿勢は大問題です。むしろ、保育園が地域の子育て支援の拠点として、生活相談員配置や送迎、朝食の提供など新たな役割へ発展する視野を持たなければなりません。保育園の詰め込んだ定員と人員配置を見直し、未充足保育助成を行い、保育園はいつでも空きがあって希望する保育園に入園できる未来をしめすべきです。

 コロナ収束後の教育のあり方に展望が見えません。突然の長期休校と学校再開を通じて、少人数学級への要求が今まで以上に高まり、ようやく小学校全学年への35人学級導入が発表され、中学校も検討対象だという首相答弁となりました。しかし、今後5年間の計画であるナンバーワン2025には、「少人数学級」に一言も言及がなく、計画づくりの見通しもありません。それは、政策決定の「思考停止」と言わざるを得ません。

 コロナ禍の昨年10月には、月80時間以上の残業をしている教職員は、小中学校で199人を超える異常な実態で、過労死ラインのタダ働きが支える「教育の板橋」だと言わざるを得ません。しかし、教育委員会の対策は、意識改革と事務改善に留まっています。少人数学級を前に進め、教職員を抜本的に増やすことを、教育政策の重点に据えるべきです。大規模化を生む小中一貫校建設は、学校環境にも、教職員の働き方改革にも逆行するもので、計画づくりは撤回すべきです。

 また、ようやく踏み込んだ対策を示した不登校プロジェクトチームを、計画を具体化する段階で解散することは大問題です。

 環境対策の位置づけは重要です。しかし、区が新エネルギー・省エネルギー普及啓発事業を廃止して、一押し事業として発表した「環境アクションポイント」は、約7割の減額と同時に、効果となるCO2削減量まで約3分の1です。それは、ナンバーワン実現プランの重点政策だとするSDGsの地球温暖化対策強化に背を向けるものです。

 第四に、公共施設整備とまちづくりに住民参加と災害対策の視点が欠落していることです。

 区の「公共施設総量抑制」方針によって廃止された大谷口いこいの家は、民間介護施設の中に「さくらテラス」を設置して代替とすると言ってきました。しかし、コロナ禍で運営が中止され、居場所は機能していません。民間では公共施設の代替にならない事は明らかです。

 公共施設の6割を占める学校は、地域のコミュニティーの中心であり、災害時は避難所となります。コロナ後の避難場所は、分散できる小規模な場所をたくさん用意することが重要です。区の言う「量から質へ」では、削減が前提のため、災害時も含めて必要な量を検討することもできません。公共施設は「量」も、「質」も追及すべきです。

 大規模改修後の東板橋体育館の名称は、「植村直巳スポーツセンター」へ変更するとしていますが通称名とはいえ、公募するなど区民の声も聞かず、議会へ報告もせずに決定することは住民無視の姿勢です。

 それは、街づくりにも現れています。大山町ピッコロ・スクウェア地区再開発は、区有地、都有地を活用する計画です。にもかかわらず準備組合の説明会は、関係する地域以外の人を排除しています。しかも、平日昼間のみで、区職員の姿もありません。区として、広く区民へ説明することを求めるべきです。高島平グランドデザインは、UR賃貸住宅の建替え方針だのみの姿勢で、そこで暮らす住民の家賃負担への影響を把握する姿勢もなく、公共施設整備は後回しです。見通しのないビジョンだけが説明され続け、住民参加のまちづくりとは程遠い状況です。

 また、上板橋駅南口再開発は、開発地域以外のまちづくりが置き去りで、駅前広場計画が東上線立体化と無関係で進められていることは大変疑問です。

 第五に、区民の困難に応えられる職員体制が確保されていないことです。

 コロナ禍の最前線で対応してきた保健所は、各健康福祉センターから保健師を引き上げての増員で、それは地域の健康福祉の入り口を手薄にするものです。予防対策課職員の有給休暇取得率は、従前から低く、コロナ禍でさらに5割以下となっています。しかし、時間外勤務を解消する対策は打たれず、緊急対応ができる体制とは言えません。しかも、保健所の区民対応の窓口が5階と7階に設置され、区民から遠ざかることは問題です。検査技師も新たに増員し、自治体としての検査能力を維持すべきです。

 福祉事務所のケースワーカーは社会福祉法が定める80対1に照らして14人も不足し、査察指導員である係長も増やしていません。定数も増やさず、組織再編と兼務では、区民の困難に寄り添うことはできません。

 区立保育園で始まる医療的ケア児の受け入れを行うための人員配置は、看護師と保育士を正規で配置すべきです。

 さらなる学校と保育園の用務・給食調理委託の拡大や福祉施設の民営化方針は、区がこれまで生み出してきた官製ワーキングプアへの反省がありません。区が直営で運営し、直接雇用する職員のスキルや経験は、さらなる委託や民営化で手放すべきではありません。

 また、土木事務所と公園事務所の統合によって、仕事量が同じにもかかわらず拠点が減る事などを理由に事務職員3名削減することは、職員削減を前提とした検討の結果です。民営化や委託による運営はきっぱりとあきらめ、土木作業の「退職不補充」と会計年度任用職員だのみのやり方ではなく、新規採用こそ行うべきです。

 会計年度任用職員の85%が女性ですが、新たな処遇改善策はありません。全庁的な職員の男女比率改善や管理職への女性の登用が後退していることは問題です。

 第六に、厳しさを強調し、コロナに便乗した削減を押し付け、開発ばかりに前のめりの行財政運営です。

 区は、今後の財政状況について「極めて厳しい財政運営となる」と言いますが、一般会計に対する基金割合は、リーマンショック後の2009年度当初予算と比較しても、5.5%も高く、公債費や起債も大幅に減少しています。区の財政力は、リーマンショック後よりも高くなっていることは明らかです。

 「緊急財政対策」による補助負担金の見直しで、障害者団体への補助金が多い団体では4割もカットされ、老人クラブの「清掃奉仕活動補助金」は全額削っています。私立幼稚園への補助金まで削減です。コロナに便乗した補助金の削減は中止し、活動支援こそ強化すべきです。

 また、一律10%シーリングによって、親子健康支援事業も離乳食訪問お助け隊も廃止、ひとり親家庭サポートブックの作成まで見送りです。教育費にいたっては、学校の裁量で活用できる令達予算が、一律10%カットされ、中学校費ではデジタル教科書分も入れると、10%を大幅に超えた減額です。中学校演劇部の発表の場である連合学芸大会まで中止です。スポーツ振興事業は15も事業の休止と廃止です。個別事業の必要性を軽視しかねない一律シーリングは行うべきではありません。

 スクラップ&ビルド、サンセット方式は、経費の削減を目的にするのではなく、事業の是非、目的、効果を十分に検討すべきです。かつ、本来の住民参加や議会における議論が保障されるべきです。

 また、小豆沢・徳丸が原・城北野球場でのグランドゴルフの使用料有料化を、利用者の意見も聞かず導入することは、とんでもありません。

 再開発関連経費は、13億9,331万円で、今後3年間で192億円を超える見込みです。今後、起債を活用しても多額の費用がつぎ込まれます。道路清掃など区民に必要な補修や清掃費用を減額し、学校の施設整備などを先送りしておきながら、再開発だけは「まちづくり推進室」まで設置し粛々と進めることは、開発ばかりに前のめりの予算だと言わざるを得ません。

 緊急財政対策による廃止・縮小などで、182億円の財源を確保したといいますが、その多くが区民サービスの後退で生み出したものです。そもそも、財政調整基金は、災害などがあった時のためにと積み上げられてきたはずです。

 むしろ、いまこそ、基金を活用してコロナ危機に直面する区民生活を支える行政の役割を発揮すべき時です。

 だからこそ、私たちは、議員提案として、1カ月児健康診査及び妊婦健康診査助成事業、新生児臨時特別給付金支給、生活保護世帯に対する夏季加算金支給、小規模事業者への家賃等助成事業を実施する11億4592万円の予算修正提案をさせていただきました。議員各位の賛同を心から呼びかけます。

 最後に、本年3月をもって退職されます156名の職員の皆様に感謝を申し上げ、私の討論を終わります。

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