討論日:2021年6月17日
ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第140号 「大和いこいの家」の存続と利用方法を改善するための陳情、及び陳情第149号 区立いこいの家の利活用計画についての陳情に対する委員会決定「不採択」に対し、「採択」を求めて討論を行います。
これらの陳情は、区の「いこいの家の利活用」の最終案が今年4月の健康福祉委員会に出された内容に対して出されたものです。区が示すいこいの家の廃止に対し、大和いこいの家についての陳情は存続を、149号は稼働率の低さや利用方法の改善により、地域での拠点となる施設の利活用を求めています。
区のいう「いこいの家の利活用」の方針は、まず「いこいの家」としては1か所も残らないというものです。
これまでいこいの家では、誰もが自由に、のんびりと無料で過ごすことができ、お茶を飲んでおしゃべりに花を咲かせたり、囲碁将棋を楽しんだり、お弁当をもってきて一日過ごすほど、高齢者の方々にとっての憩える居場所でした。しかし、そういった施設はなくなるということです。
区はフリースペースをつくって自由にすごせるようにするといいますが、フリースペースで囲碁将棋はできません。のんびり新聞を読みながらお茶を飲めるわけでもありません。区の説明は人との待ち合わせや休憩に利用ができる程度とのことで、これでは利用者の方々が求めている憩えるスペースとはいいがたいものです。
さらにいくつかの施設は、貸施設として利用できますが、これまでの無料で自由にというものではありません。
また、介護予防事業を実施している施設については、今後も優先して実施できるように配慮されるようですが、これまでとはちがい、会場を借りるための費用が発生します。
このように、区が示している利活用の内容は、昭和49年の創設以来47年間、その設置要綱にあるように、「高齢者に潤いのある生活を営むためのいこいの場としての提供、区民の福祉の増進に寄与する」ことを目的としての施設ではなくなってしまうということです。
そもそも「いこいの家」の設置は、 昭和40年、当時の厚生省(当時)が各都道府県知事あてに通知をだし、全国的に「老人憩の家」の設置を進めていきました。
板橋区はこの通知を受け、昭和49年10月に、大谷口いこいの家と桜川いこいの家、また、現在はふれあい館ですが、中台いこいの家も開設しました。区立いこいの家は平成16年度までは16カ所あったいこいの家は、この間減らされて13か所になっています。
私たちが陳情の採択を求める理由の一つは、まず区が施設廃止の理由としている「利用者が少ない」というのは区の行革方針によってもたらされたからです。
稼働率を引き下げた最大の理由は、入浴事業の廃止です。入浴事業は、以前は週6日の実施で、男女別に3日ずつ行われていましたが、行革方針の中で、入浴日数がしだいに減らされ、平成28年度には週に男女各1日ずつまで減らされました。平成29年度には、入浴事業の完全廃止で激減しました。平成22年度は年間16万4千人だった利用者数は、入浴事業が完全廃止となった平成29年度は4万1076人と、4分の1まで減ったのです。
区自らが稼働率を引き下げたのにもかかわらず、区は利用の減っていく状況を放置し続けていきました。施設の本来の目的にそって見直すならば、廃止ではなく、自らを反省し、浴室を多目的の施設に改修するだけでなく、地域住民の利用を活発にできる取り組みこそ進めるべきでした。
採択を求める二つ目は、「大和いこいの家」は利用者が減っていないということ、そして地域包括支援センターの移設ありきだということです。
大和いこいの家の利用者は、平成25年度も令和元年度も変わらない5300人強と13施設でも高い実績です。また、大和いこいの家に地域包括支援センターを移設する理由に、富士見地区の地域包括支援センターが区域内にないことをいいますが、区はいこいの家の利活用の基本的な考え方で、公共施設の配置検討の方向性と整合を図る必要があるといっています。ならばなぜ「大和いこいの家」だけは、「富士見地区エリアマネジメント」がいまだに検討中であるにもかかわらず、地域包括支援センターの移設ありきになるのでしょうか。この基本的な考え方でいっても、富士見地区のエリアマネジメントの中で検討すべきではないでしょうか。
採択すべき3つ目の理由は、利用者も地域住民もいこいの家の施設を利用し続けたいと願っているということです。
このように区が実施した利用者アンケートにおいて、「今後も利用したい」と答えた利用者は99.1%。利用者以外へのアンケートでも「今後利用してみたいですか」という設問に対して95.3%が利用したいと答えています。利用する理由で一番多いのは「近所にあるから」であり、地域における活動拠点としての必要性が示されていました。
区が実施したアンケートからは、施設を廃止する理由はどこにもありません。逆にもっとPRをするなど、事業の強化拡充こそ求められているのです。
4つ目の理由は、区民の参画が考慮されていないということです。
いこいの家のあり方が大きく変えられる方向性はすでに板橋区の公共施設の再編整備計画の中で示されていました。しかし具体的にその方向性が示されてきたのは、令和2年第1回定例会健康福祉委員会への報告でした。さらに、地域の利用者に対する説明会はコロナ禍のもと半年遅れの9月となりました。そして4月の閉会中の委員会において「最終案」なるものを示してきました。区は地域にこの最終案を説明で入るのは10月になるといいます。そこで出されてきた意見を最終的に取り入れて決めるのかという質問に対し、区は「変わらない。これが最後だ」と答弁していました。議会への陳情提出だけでなく、区長への存続求める要望書がたくさんの署名を添えて提出もされています。住民の意見も反映できない進め方は問題です。
5点目は、区としていこいの家が担う役割をどのように進めていくのかという施策への公的責任が果たされていないという点です。
高齢者に潤いのある生活を営むためのいこいの場を提供し、その福祉の増進に寄与することを目的として誕生した「老人いこいの家」は、多世代交流の場を含んだ今日においても、高齢者の孤立化を防ぐこと、地域における高齢者の生きがいづくり、社会参加、介護予防の必要性など、ますますニーズも需要も高まる事業として、拡充こそ必要であり、廃止の方向は逆行しています。
都内23区では、現在も多くの区がB型の老人福祉センターとしての施設として、さまざまな工夫が凝らされて拡充・発展しています。各区によって、名称こそさまざまですが、無料での利用はもちろんのこと、さまざまなサークル活動や入浴事業が、また施設によっては、多世代交流的なイベントなども実施されています。運営主体を地域住民主導としている自治体もあり、まさに「地域力」「防災力」「福祉力」の拠点ともいえる施設のあり方となっています。各区の事業の目的をみると、現在のニーズや時代の要請にも対応したもの、「高齢者の孤立化を防ぎ、介護予防として重要な役割を担う施設」として位置づけられています。本来は、板橋区もこうした施設の運営、充実ができたはずであり、すべきであることを強く指摘し、陳情140号、149号ともに採択をすることを求め、討論を終わります。