陳情第163号 コロナ禍のもと、児童・生徒の健康と学習権が守られるために、生理用品の配布と相談環境の整備を求める陳情に賛成する討論

討論日:2021年10月12日

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、『陳情第163号 コロナ禍のもと、児童・生徒の健康と学習権が守られるために、生理用品の配布と相談環境の整備を求める陳情』に対する賛成討論を行います。

 本陳情は、コロナ禍で露呈した『生理の貧困』問題を解決するために、4点について実施することを求めています。その内容は、一つは『学校施設の女子トイレ個室に生理用品を設置すること』二つ目は『必要な児童生徒に生理用ショーツを配布すること』三つ目は、『学校全体で相談できる環境整備に取り組むこと』四つ目は『そのために必要な財政措置を国に求めること』というものです。

 『生理と貧困』の問題は、新しい問題ではありません。これまで女性の自己犠牲によって当たり前のこととしてスルーされてきたものであり、女性差別・ジェンダー平等が問われる大きな課題です。この陳情が問うているのは、困っている人への支援にとどまらず、女性差別やジェンダー平等の視点に立って解決すべき課題だという提起と受け止め以下、賛成の意見を述べます。

 賛成する第一の理由は、既存の制度や取り組みでは解決できておらず、新たな対応が必要だからです。

 教育委員会は、陳情の説明の中で、『生活困窮者については生活保護等のセーフティーネットを活用することが重要。就学援助等の制度で学習権を保障している。』と述べています。 

 これは、『生理の貧困』問題を根本的に理解していない姿勢であると言わざるを得ません。

 『生理用品を軽減税率対象に!』というオンライン署名から生まれた団体である「ハッシュタグ・みんなの生理」が行ったアンケートによると、コロナ危機のもとで若い女性の4人に一人が金銭的理由で生理用品の入手に苦労したと答え、生理用品でないもので代用した人は27%、交換する頻度を減らした人は37%もいたことが示されています。生活保護制度や就学援助制度がある現在でも状況が深刻化しているのです。そもそも、現在の制度では、生理のあるなしは考慮されておらず、特段生理用品購入のための費用は積算されていません。30年~40年間で40~60万円とも言われる生理用品購入の負担額に見合う支援は一切ありません。それどころか、消費税の軽減税率の対象にさえなっていません。だからこそ、他国でも他の自治体でも新たな取り組みをスタートさせているのです。新たな予算措置もなく、既存の制度でよいという姿勢は改めるべきです。

 賛成する第二の理由は、教育委員会として実態を十分に掴んでおらず、適切な支援が行えていると言えないからです。

 教育委員会は、学校のトイレの個室に生理用品を配置しない理由として、『今年3月29日から始まった防災備蓄用生理用品の無料配布が実施されていること』『学校では準備がない状態で困っている児童・生徒には保健室で交付していること』を挙げています。

 一方で質疑の中で明らかになったように、無料配布事業がどの程度周知されているのか調査していません。また、学校での配布については、『貸出』として新たに購入したものを返却するよう求める学校があるとも答えています。陳情に反対した委員からは『学校によって考え方が違う。現場の状況や環境によって適切な対応というのがあるのではないか。一律でトイレということでもないと思う』との意見がありました。『貸出』として返却させるのは、生理用品を手にすることが難しい児童・生徒にとってなんの支援にもなりません。むしろ、相談どころか、受け取りに行くことさえも躊躇するでしょう。それでどうして適切な対応と言えるのでしょうか。また、保健室で生理用品を交付することについて、相談の機会につながるとして肯定する意見がありました。しかし、相談する機会を設けることは生理用品を渡すとき以外の場面でも行えるはずです。逆に、生理用品を受け取ることと相談がセットであるという間違ったメッセージになりかねず、受け取ることに一層のハードルがかかるのではないかと懸念します。また、『生理用品がないときは保健室に来るように』との周知も徹底されていません。

 そもそも、生理用品が足りない人には、『生理用品を配る』。このことが最も早く確実な解決策であり、あれこれと条件を付けるべきではありません。

 賛成する第3の理由は、生理用品はトイレに設置すべきと考えるからです。

特に成長期の児童・生徒は生理への対応に慣れていなかったり、また、人によっては生理不順になることもあります。予定していないときに生理が来ることや量が多くなることもあるのです。自らの体の変化を受け入れるだけでも重荷となる上に、完璧な管理が求められます。変化に気づいてトイレに行ったとき、生理用ナプキンがなかったらどうなりますか。トイレットペーパーなどで代用するのです。そんな時、保健室に行っても養護教諭がいなかったら?生理用品をトイレに設置すべきなのは、生理用品が手に入れられない児童・生徒だけでなく、すべての児童生徒にとっても必要なことなのです。生理用品はトイレで使用するものであり、トイレットペーパーと同様の消耗品です。トイレで使用するものはトイレに置くべきです。

 賛成する第4の理由は、国として財政措置を図ることは当然のことと考えるからです。

 陳情では『憲法が定める社会保障的義務及び教育を受ける権利に基づき、ふさわしい財政措置を取るよう国に求める』とあります。生理が始まると、生理用品がなければ日常生活さえ送ることができません。安心して学校に通うためには欠かせないものなのです。だからこそ、予算措置をして生理用品の無償配布に踏み出す自治体が生まれているのではないでしょうか。国が予算化すれば、全国どこでも生理用品の入手に困る女性を減らしていくことができます。生理の貧困問題はすべての女性の問題です。人口の半分である女性の困難を解決するために国に対し予算措置を求めることは当然の権利です。

 神奈川県が実施したアンケートによると、生理用品が個室トイレにあることで安心感があると答えた生徒は8割を超えています。困っている人を選別するより、より広範な支援が求められているのです。

 委員会では、反対した委員からも充実やさらなる検討との意見が出されました。であるならば、この陳情を採択し、区や国に対し積極的な対応を求めるべきではないでしょうか。陳情を不採択にすることは、区の姿勢や取り組みを追認するものであり、『生理の貧困』の解決を遅らせることにつながります。

 改めて、本陳情の採択を強く求め、陳情への賛成討論といたします。

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