討論日:2021年10月12日
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、「陳情第164号 小中学校の給食費の無償化を求める陳情」の委員会決定「不採択」に反対し、陳情に賛成する立場で討論を行います。
本陳情は、区立小中学校の給食費を無償化すること、また、国として学校給食を無償化するよう意見を上げることを求めるものです。
本陳情に賛成する第一の理由は、学校給食は教育活動の一貫であり、義務教育は無償とすべきだからです。憲法は、義務教育の無償を定めていますが、給食費は板橋の中学生は1年間で58,960円もかかります。義務教育にかかる家庭の負担は給食費だけではなく、制服代や学用品、修学旅行代などもあります。
学校給食には、食育として、アレルギーの学習、地産地消、異文化理解の促進などの様々な役割があります。いまは感染症対策で黙食となっていますが、子ども達は毎日の給食を楽しみにしています。また、栄養のとれた食事を提供することで、子どもの成長と発達を保障していることも、本当に重要です。
区教育委員会は、学校給食法第11条に、学校給食費は児童または生徒の保護者負担とすると規定があることをできない理由としています。しかし、兵庫県明石市など、全国の自治体で給食無償化が広がっています。給食費を助成して、家庭の負担を減らしていくことは不可能ではありません。板橋区もかつて、給食用物資無償供給事業を行い、給食費の一部を助成していました。給食無償化を実施している自治体は、食育推進や保護者の経済負担軽減、さらに子育て世帯の定住・転入の促進などを目的に挙げています。こども自身の気持ちを考えると、無償化の効果として、「給食費の未納・滞納に対する心理的負担の解消」も期待できます。
第二の理由は、学校給食は貧困対策として有効だからです。いま給食には福祉としての側面があります。その役割は、格差と貧困が広がるなかで、ますます重要となっています。
今年6月の「全国郵送世論調査」では、子どもの食の貧困が深刻だと思うひとは81%に達していることがわかりました。困窮子育て世帯を対象として、支援団体が今夏行った調査では、コロナ感染拡大前と比べ「食事の量が減った」は47%、「食事の回数が減った」も23%に上りました。学校給食が命綱という子どもは、新型コロナ流行の以前より7人に1人いることがわかっています。そこにコロナ禍が直撃し、さらに感染拡大が長引いているのです。
全国で「子ども食堂」が広がりました。「フードバンク」の取組も広がっています。地域で子どもの食を支えようとする取り組みの重要性は増しています。しかし、民間でできる「共助」には限界もあります。住む地域や状況にかかわらず、誰でも支援を受けられることが必要です。貧困対策には、「公助」が欠かせません。子ども食堂に任せきるのではなく、学校給食の無償化で自治体が答えるべきです。
委員会質疑のなかでは、反対する委員からも、学校給食無償化そのものを否定する意見は出されませんでした。反対する理由は、唯一「財政」です。区として行う際のランニングコスト12億円を区単独で行うのは難しいこと、国に意見をあげるという点では、国家財政が厳しく、高齢者の介護や医療の値上げも行われる中で、さらなる財政支出は結局は国民ひとりひとりのツケにまわってくるというものでした。
しかし、この点こそ、今までの政治がきちんと国民の暮らしに向き合ってきたのかどうかの根本が問われる問題だと考えます。長期に渡って、子ども達だけでなく、国民みんなが我慢を強いられてきました。公助に頼る前に自分で何とかしようという「自助」、貧しいのは自分のせいといった「自己責任」が、国民を追い詰めてきました。結果、賃金はあがらず、雇用は一層不安定となり、貧困と格差が拡大しただけです。いま必要なのは、国民の暮らしをすそ野広く支え、暮らしの安心をつくりだし、経済の好循環を生み出す道です。子ども達のために財源を作り出すことこそ、大人の責任ではないでしょうか。
学校給食は全ての子どもに与えるべきとした国連教育科学文化機関(ユネスコ)勧告や、義務教育の無償を定めた憲法26条2項にのっとり、板橋区でも学校給食の無償化について舵を切るべきと考え、本陳情に賛意を示してわたしの討論を終わります。